実用性を備えた燃料電池自動車の登場
ザフィーラ「フューエル・セル」
1998年、GM/オペルはパリ・モーターショーで、オペル・ザフィーラをベースに開発した燃料電池自動車のコンセプトカー、ザフィーラ「フューエル・セル」を公開しました。 このコンセプトカーは、メタノールから水素を取り出す改質器を装備しており、最高速度は120km/hに達し、0-100km/h加速は約20秒、さらに、市販型オペル・ザフィーラとほぼ同等の航続距離を実現するなど、一般公道での走行に十分に耐え得る性能を発揮しました。
「HydroGen1」ハイドロジェン・ワン
2000年3月、GM/オペルは大幅な進歩を遂げた燃料電池自動車「ハイドロジェン・ワン」を発表しました。
ハイドロジェン・ワンはメタノールから車上改質により水素を生成していた旧モデルと異なり、液体水素タンクを備え、電気エネルギーの供給に必要な一次エネルギーを直接車体に搭載していました。
その結果として、車内を大きく占拠していた改質器や計器類が不要になるとともに、システム全体の小型化が進んだことと相まって、完全な5人乗りを実現するなど、実用性の大幅な向上を果たしました。
ハイドロジェン・ワンの燃料電池スタックはボンネット内部にコンパクトに収められ、80kW/109hpの定常出力と120kWの最高出力を発揮。
最高速度140km/h、0-100km/h加速16秒という、2.5リッタークラスのディーゼルエンジン搭載車と同等の動力性能を実現しました。
また、燃料の液体水素を収める貯蔵タンクは、最大75リットル/5キロの容量を備え、その航続距離は約400km(GM社内データ)と、量産車に遜色のないものでした。
ハイドロジェン・ワンは、2000年シドニー・オリンピックでフルマラソン競技の先導車に採用され、その完成度の高さと、燃料電池自動車が将来の自動車の主流になる可能性を世界にアピールしました。
さらに、2001年5月にはアリゾナ州・GMメサ性能試験場で連続24時間の耐久走行実験を実施。
日中の気温が摂氏40度に達する過酷な条件の下、24時間で1,380kmを走破して15件の国際耐久記録を樹立するなど、信頼性の高さも証明しました。
また、低公害車による自動車競技大会「ミシュラン・チャレンジ・ビバンダム」では、ロスアンゼルスからラスベガスまでの約350kmを完走した、唯一の燃料電池自動車でした。
「HydroGen3」ハイドロジェン・スリー

2001年9月のフランクフルト・モーターショーで公開された「ハイドロジェン・スリー」は、ハイドロジェン・ワンの経験を基に、動力システムの性能向上と日常的実用性の確保を主な目的に開発されました。
システム全体の効率化が図られた結果、ハイドロジェン・ワンで必要とされた幾つかのモジュールが不要となり、中でも、床下に搭載していた2次電池が不要となったことにより、市販型の5人乗りザフィーラと同等の荷室床高と積載容量を確保しています。
さらに、駆動モーターをはじめとする動力系ユニットは、小型・軽量化が進むとともにモジュール化され、量産車のマウントにそのまま搭載可能となるなど、量産化を視野に入れた構造を備えており、燃料電池自動車の市場投入に一歩近づいたものとなっています。
燃料電池スタックは定常出力94kW/126hp、最高出力129kW/179hpを発揮し、最高速度160km/h、0-100km/h加速16秒という、量産車と遜色のない走行性能を実現しています。
GMは、2003年7月から1年間に渡り、世界最大の総合航空貨物輸送会社フェデラル・エクスプレス社(FedEx)と共同で、東京都内の一部地域における集配業務にハイドロジェン・スリーを使用する商用テスト・プログラムを実施しました。このプログラムを通じて、燃料電池自動車の信頼性と耐久性に対する検証と各種のデータ収集が行われ、燃料電池自動車の市販化に向けて、大きな成果を得ました。
また、ハイドロジェン・スリーは、日本の経済産業省主導による「水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)」に参加しています。このプロジェクトを通じて、GMは他の自動車会社及びエネルギー会社とも協力しながら、燃料電池技術に関するより一層の理解促進と水素経済実現のための基盤構築を目指しています。
この他にもハイドロジェン・スリーは耐久テストの一環として、各種のスポーツ競技にも参加しています。
近年の例では、2004年夏に開催されたGM主催の「オペル・フューエルセル・マラソン」において、ノルウェーのハンメルフェストからポルトガルのロカ岬に至る9,694kmを38日間で走破し、燃料電池自動車による連続走行の世界記録を更新しました。
また、2005年4月2日に開催されたモナコ自動車クラブ主催の「モンテカルロ燃料電池・ハイブリッド・ラリー」では、スイス、イタリア、フランスの山岳地帯を含む過酷な417kmを7時間35分で走破し、燃料電池部門優勝(総合3位)という好成績を得て、その耐久性を実証しました。
